地域のスマホ・パソコン相談会を実施している中で、ある相談が寄せられました。
地域に導入された電子回覧板「結ネット」の初期設定の仕方が分からないというものです。
導入されたのは東山見自治振興会、その配下にある畑直地区にも導入されました。しかし実際には、
- アプリの入れ方が分からない
- 初期設定が出来ない
- 誰に聞けばよいのか分からない
という理由で、**「存在していないのと同じ状態」になっている方が複数おられることが分かりました。
これは、個人の問題ではありません。
地域の実情を十分に考慮しないまま仕組みだけを導入してしまった構造的な問題です。

目次
「便利な仕組みを入れれば解決する」という誤解
結ネット自体は、決して悪い仕組みではありません。
紙の回覧板に比べ、
- 情報が早く届く
- 見逃しが減る
- 若い世代にも届きやすい
といった利点があります。
しかし問題は、「導入=課題解決」だと考えてしまった点にあります。
これは、かつて行政が繰り返してきた「箱物行政」と同じ構図です。
- 建物を建てれば地域は活性化する
- システムを入れれば便利になる
外枠だけ整え、「使うところ」「支えるところ」を現場任せにする。
その結果、使われず、活かされず、「導入したこと自体」が目的化してしまうのです。
高齢者にとっての「初期設定」は最大の壁
スマホ相談会を続けていると、はっきり分かります。
高齢者にとっての最大のハードルは、**日常的な操作ではなく「最初の一歩」**です。
- アプリのインストール
- ID・パスワードの設定
- メール認証
- 通知設定
これらは、若い世代には数分の作業でも、高齢者にとっては心が折れる工程です。
ここを越えられなければ、
- 便利さを体験する前に脱落する
- 「やっぱり私には無理」と思ってしまう
- 次に挑戦する意欲を失う
という、取り返しのつかない離脱が起こります。
本当に必要だったのは「導入支援」
高齢者の多い地域にデジタル回覧板を導入するなら、最低限、以下の支援が必要だったはずです。
① 初期設定の伴走支援
- 地域ごとの設定会
- 1人ずつ一緒に設定
- その場で「届いた」「見られた」を体験してもらう
② 困ったときの相談先を明確にする
- パスワードを忘れても大丈夫
- 「分からなくなったらここに来ればいい」という安心感
③ システムより「人」を残す
- 大事なのはアプリではなく
聞ける人が身近にいること
実際、今行われているスマホ・パソコン相談会は、本来、導入側がセットで用意すべき支援だったと言えます。
畑直地区で起きていることは、むしろ健全である
今回、相談会に来られた方々は、
- 分からないことを分からないと言えた
- 誰かに助けを求めることが出来た
これは、地域としてとても健全な状態です。
多くの地域では、
- 分からないまま黙ってしまう
- 使っていないが問題提起されない
- 「自分だけだろう」と思って諦める
という形で、課題が表に出ません。
畑直では、現場の実情が可視化された。これは失敗ではなく、改善の出発点です。
デジタル化の目的を見失ってはいけない
地域のデジタル化の目的は、
- 新しい技術を入れること
- 先進的に見せること
ではありません。
地域住民が、安心して情報を受け取れること。
誰も取り残されないこと。
その目的を忘れたデジタル化は、便利になるどころか、分断を生みます。
「導入して終わり」から「使われ続ける仕組み」へ
今回の経験は、畑直地区だけの話ではありません。
全国の高齢者地域で、同じことが起きています。
だからこそ、
- 導入してから何が起きているのか
- 誰が困っているのか
- 何が足りなかったのか
を、現場から発信することに意味があります。
デジタル回覧板は、導入してからが本番です。
地域の実情に寄り添い、人の手を惜しまないこと。
それこそが、本当の意味での地域DXなのだと思います。

