地域でスマホ・パソコン相談会を行っていると、共通して感じることがある。
それは、高齢者が抱えるスマホの問題は、「操作が分からない」以前に、そもそも前提条件が支援する側と大きくズレているという点だ。

先日、こんな相談があった。

ストレージが100%で動かなくなったスマホ

相談に来られたのは高齢の女性。
スマホのストレージがほぼ100%になり、動作が極端に重く、実質的に使えない状態になっていた。

「そろそろ新しいスマホを買ってはどうですか?」
そう聞くと、返ってきた答えは明確だった。

年齢も年齢だし、新しいスマホを買うつもりはない
子供が来た時に聞こうと思っているけれど、なかなか来ないし、来てもあまり本気でやってくれない

この言葉には、高齢化地域のリアルが詰まっている。


高齢者にとって「買い替え」は前提ではない

スマホが動かなくなれば「買い替え」という発想は、若い世代や支援する側にとっては自然だ。
しかし、高齢者にとってはそうではない。

  • これが「最後のスマホ」だと思っている
  • もう新しい操作を覚える自信がない
  • 高いお金をかける意味を感じない

つまり、「古くてもいいから、今のスマホを何とか使い続けたい」というニーズが、はっきり存在している。


写真・動画は「消せない大切なもの」

ストレージを圧迫していた主な原因は、子供や家族から送られてきた写真や動画だった。

子供が送ってくる画像や動画を見るのが楽しみ

この一言で、なぜデータが溜まっているのかが全て分かる。

高齢者にとって、
写真や動画は単なるデータではない。

  • 家族とつながっている実感
  • 日常の楽しみ
  • 孤独感を和らげる大切な存在

「容量がいっぱいだから消しましょう」という提案が、
本人には「思い出を捨ててください」と聞こえてしまうこともある。

今回は、不要なアプリを整理した上で、写真や動画をノートパソコンに移し、スマホは再び使える状態になった。


見えてきた「もう一つの課題」

この相談を通じて、改めて気づかされたことがある。

それは、
高齢化が進む地域では「古いスマホをいかに使い続けるか」自体が、大きな課題になっているという事実だ。

相談会に来られる方の多くが、

  • 数世代前のスマホ
  • ストレージ容量が極端に少ない
  • OSアップデートもできない

それでも、

  • 電話
  • LINE
  • 写真を見る

これができれば十分、という方がほとんどだ。


「最新技術」より「延命支援」

行政や事業者のデジタル施策は、

  • 新しいアプリ
  • 新しい端末
  • デジタル化の推進

に寄りがちだ。

しかし、現場で求められているのは、
最新技術の導入ではなく、今あるものを使い切る支援ではないだろうか。

  • 不要アプリの整理
  • 写真・動画の外部保存
  • 自動ダウンロードの停止
  • 動かなくなる前の定期点検

こうした地味な支援こそが、高齢者の日常を支えている。


おわりに

高齢化が進む地域では、「デジタル化=新しいものを導入すること」ではない。
古いスマホでも、安心して使い続けられる環境をどう作るかが問われている。

今回の相談は、
「高齢者はデジタルに弱い」という単純な話ではなく、
支援する側が、高齢者の現実をどこまで理解できているのかを突きつける事例だったように思う。

地域のデジタル支援は、
派手さよりも、こうした一つ一つの延命支援の積み重ねから始まるのではないだろうか。