目次
地域コミュニティの希薄化とは何か
コミュニティの「つながり」が弱くなる状態とは
コミュニティの「つながり」が弱くなる状態とは、住民同士の物理的・心理的な距離が遠くなり、お互いに関心が薄れている状態を指します。
なぜ今、地域コミュニティの希薄化が進んでいるのか
少子高齢化や核家族化が進んでいることや、田舎では、車社会になり、勤務先と家を往復するだけになり、町内会が弱体化して、行事が維持できなくなり、住民同士が直接顔を合わせる機会が減少して、ちょっとした会話も生まれなくなったことにより、コミュニケーションが減少したことが原因です。

地域コミュニティ希薄化が引き起こす2つの問題構造
① 地域が直接的に被る「実害」
孤独死の発見遅れと地域に残る罪悪感
地域コミュニティが希薄化すると、住民同士の関心が薄れ、独居老人が孤立します。孤立した独居老人とご近所とのコミュニケーションが無くなると、いつの間にか、孤独死が発生し、その発見が遅れ、腐敗臭がして初めて、孤独死したことに気付くことになります。
そこまでなってしまうと、地域住民には、「何か出来たのでは無いか」と言う強い罪悪感が生まれ、地域に深い傷を残します。
特殊詐欺被害の拡大と発見の遅れ
特殊詐欺被害が発生した場合、警察への連絡が最優先ですが、本人が、重大事が発生しているとは認識せず、警察に連絡する案件なのか、分からないことがあります。そのような場合、ちょっとした相談をご近所に出来れば、被害が起きても、初期段階で、警察への通報が可能です。
しかし、地域のコミュニケーションが希薄化すると、ちょっとした相談も出来なくなるので、被害が拡大します。
災害時における独居高齢者の取り残し
災害発生時に、避難所に避難しても、地域のコミュニケーションが希薄化すると、ご近所に誰が居るのかも分からなくなります。
避難所に、ご近所さんが居ないとなれば、救助に向かうことが出来ますが、ご近所との関係が薄くなると、独居老人が取り残されます。
空き家の放置による地域環境の悪化
人口減少している日本では、空き家が増えることは避けられません。空き家が増加しても、その空き家が管理されていれば、大きな問題にはなりません。しかし、地域のコミュニケーションが希薄になり、ご近所に迷惑を掛けても平気になってしまうと、空き家は放置され、地域は、一気に荒れ果てしまいます。
② 雰囲気を悪化させる「心理・関係性の問題」
コミュニケーション減少による関係性の断絶
コミュニケーションの減少は、お互いの信頼関係を断ち切る重大な要因です。
地域の関係の断絶は、地域の人間関係に深い傷を生む要因になります。
肯定的ストロークの減少がもたらす影響
人間は、存在を認めてもらうストロークを求めています。ストロークは心の食べ物と言われ、交流分析において、自己肯定感を左右する概念です。
地域コミュニティでは、本来
「ありがとう」
「助かったわ」
「よう頑張っとるね」
「顔見られて安心したわ」
と言うような肯定的なストロークを求めていますが、コミュニティが、希薄化するとそのような肯定的なストロークが得られなくなります。
そうなると、心の食べ物が減って行き、心が空腹(飢餓)になります。
否定的ストロークを求める心理の発生
肯定的なストロークが得られず、心の食べ物が減少して、ストローク飢餓になると、人間は、無意識に簡単に得られる否定的なストロークを求めてしまいます。
例えば、周囲から無視され続けると、わざと問題行動(万引き、暴力、いじめなど)を起こし、叱られることで、否定的なストロークを得ようとします。肯定的なストロークで満たされていると、「自分は存在する価値がある」と思っているので、他人を貶めたり、暴力などはしません。
否定的なストロークはとても辛いものなのですが、自分から仕掛ければ簡単に手に入るので、地域で荒んだやり取りが発生して、ちょっとした事で揚げ足取りをしたり、町内の運営や地域を良くする取り組みにも批判的な発言が出るようになります。
裏面交流が生む不信感と地域の分断
さらに状況が悪化すると、表面のメッセージは論理的ですが、その裏に否定的な感情を交えた、裏面交流が起こるようになります。
このような裏面交流が何度も続いて、心理的ゲームに発展して、結末感情(ラケット感情)を味わうのです。
結末感情は、最後はいつも同じ不快感を味わうもので、地域の関係を決定的に悪くしてしまいます。
なぜ「心理的な問題」がより深刻なのか
実害は結果であり、原因は関係性の希薄化
地域が被る「実害」は、地域の関係性の希薄化が原因で起こることで、大元は「心理的な問題」なのです。
地域の関係性が維持出来れば実害は最小限に食い止めることが出来ます。
雰囲気の悪化がさらにコミュニケーションを減らす悪循環
地域コミュニティが希薄化して、無意識に否定的なコミュニケーションを求めてしまう地域になると、地域が否定的なやり取りで荒んでしまい、コミュニケーションが減少する悪純化に陥ります。
見えない問題ほど対策が遅れる理由
コミュニティが希薄化して、否定的なコミュニケーションや裏面交流が起きても、住民は、「何か嫌な雰囲気だな」と感じるだけで、目に見える問題では無いので、ついつい見逃されてしまいます。
そして、その問題が顕在化した時には、取り返しのつかない亀裂を生むのです。
地域コミュニティ希薄化を解決するための考え方
「問題解決」ではなく「関係性の再構築」が重要
地域活性化の取り組みでは、地域ブランドの構築や観光振興など、目立つ取り組みが注目されますが、外向きの発信に注力して、住民の生活が崩壊しては何の意味もありません。
住民の関係性を再構築することは、地域が永続する上で、とても重要で、最優先すべき課題なのです。
小さな接点を増やすことが全ての出発点
地域コミュニティの希薄化を防ぐには、気軽で小さな接点を増やすことがとても重要なのです。
このような小さな取り組みは、外部からの評価は得られにくいかも知れませんが、ここを固めずに、外部へのアピールをしても、地域外の人とのコミュニケーションも人間味の無い冷たい対応だったり、皮肉交じりのやり取りだと、地域のファンにはなってもらえません。
強制ではなく自然発生的なコミュニケーションを設計する
地域コミュニケーションは義務役割で、強制される場では無く、「行きたいから行く」「問題を解決したいから行く」のような自然発生で生まれるコミュニケーションがとても重要です。
自然発生のコミュニケーションは永続しますし、地域コミュニティを改善する循環を生みます。
具体的な解決策①|日常的な接点を増やす仕組みづくり
誰でも参加しやすい場の設計(低ハードル化)
地域コミュニティを改善するためには、運営も参加もハードルを下げて、運営に手間が掛からない。誰でもいつでも参加できる設計にすることが重要です。
どれだけ良い取り組みでも、運営が大変で、継続出来なければ、地域住民は、「負け」と感じ、取り組み自体に否定的な意見が出てしまいます。
継続することで関係性を深める仕組み
参加しやすい活動を継続することで、地域住民のコミュニケーションが自然に生まれ、関係性が深まって行きます。
参加しやすく、楽しい取り組みが継続されれば、地域のコミュニケーションは自然に改善して行きます。
スマホ相談会・農園・晩酌宴会など雑談の場が持つ意味
畑直で行われている「スマホ・パソコン相談会」は、解決したい問題があるから相談に行く。相談会で、他の住民と一緒になれば、自然にコミュニケーションが生まれます。農園はやりたい人が自由に参加して作物を植える。ここでも、他の住民と一緒になれば自然にコミュニケーションが生まれます。晩酌宴会は、食べ物、飲み物を持参して、楽しく会話して、終われば、自分の持ってきた物は持ち帰ることによって、運営の手間を掛けずに継続出来る仕組みです。
このような小さな取り組みによって、少しずつコミュニケーションが生まれることが実はとても重要なのです。
具体的な解決策②|肯定的ストロークを生み出す環境づくり
「ありがとう」「助かった」を自然に生む設計
「ありがとう」「助かった」と言う、肯定的なストロークが生まれると、地域住民の心のコップに肯定的なストロークが少しずつ溜まって行きます。心のコップに肯定的なストロークがいっぱいになれば、周囲の人に、肯定的なストロークを分け与えることが出来るようになるので、地域のコミュニケーションが円滑で、笑みが溢れるものになります。
役割や出番をつくることの重要性
地域の小さな取り組みに、負担の無い範囲で、役割や出番を作ることで、役割を担った人が、住民から感謝されたりするようになります。
また、小さな取り組みでも、やり遂げたことは、自分で自分を褒める、自己承認にもなるのです。
小さな成功体験の共有が地域を変える
人口減少が続いている地域は、連戦連敗で、地域が意気消沈しています。このような地域では、小さな成功が生む効果はとても大きいものです。「自分たちでも出来る」と感じることはとても重要なのです。
その成功体験が積み上がることで、地域は自信に溢れた前向きな地域へと変わって行くのです。
具体的な解決策③|裏面交流を減らすためのアプローチ
不満が表に出る仕組みをつくる
地域の様々な取り組みに対して、全ての人が賛成する訳ではありません。不満や否定的な感情を持つ人は必ずいます。
そんな時に、表向きは論理的で、もっともな言い分でも、その裏に別の感情を伝えてくる、裏面交流では無く、本音が表に出る仕組みが大事で、そうなるには、住民がコミュニケーションに対するリテラシー(能力)を高める必要があります。
対立を避けるのではなく、扱える関係性をつくる
地域の運営には、反対意見は必ずあります。対立を避けて、問題解決を先送りするのでは無く、問題を正面から本音で話し合える関係を作ることが重要なのです。
時間をかけて信頼を積み上げる重要性
人は、それぞれ違った環境で育つので、自分と同じ考えの人はいません。違った考えがあることを受け入れて、考えの背景を理解して、お互いの信頼関係を積み上げることが出来れば、住みやすい地域になります。
ただ、これは簡単なことでは無いので、ゆっくり時間をかけて取り組む必要があります。
地域コミュニティ再生は「時間をかけて進めるもの」
短期的な成果を求めすぎるリスク
地域コミュニティの改善は短期間では出来ません。短期間に大きな改善をしようとすると、それまでの自分の文化を否定されたと感じるでしょう。
その人その人の文化は、先代、先々代から受け継いだ、その家族のアイデンティティなので、その文化を否定されることは、大きなストレスになり、地域に大きな亀裂を生む可能性があるものです。
地域コミュニティの改善には、時間を掛けてゆっくりと少しずつ変化して行くことが重要なのです。
小さな変化の積み重ねが大きな改善につながる
小さな変化を積み上げて、何年も経過して振り返ると、改善されたと感じる程度で十分です。
一つ一つの取り組みは、些細なもので良いのです。
まとめ|地域コミュニティの希薄化を防ぐために必要な視点
地域コミュニティの希薄化を防ぐためには、とても小さな取り組みから、少しずづコミュニケーションの機会を作ることがとても重要です。
運営に負担を掛けず、誰でも気軽に集まれる仕組みを作り、住民同士が、本音で話し合える環境を作って行くことで、住民同士の理解が深まり、円滑なコミュニケーションが出来るようになるのです。
